心臓病 のち うつ病 ときどき 腸閉塞

どん底からの復活をめざして…

病と老い~母の人工透析①~

慢性腎不全を患っている母。
昨年から体調を崩し、今年に入ってからの血液検査で、
腎不全の程度を示す数値がどんどん上昇していき、
とうとう人工透析のボーダーラインに達してしまった。
医師からの説明があるので一緒に聞いて欲しいという。
昔は病弱だった私の病状を父・母が医師に説明を受けたものだが
今は母の病状について、医師から私が説明を受ける立場になった。

慢性腎不全は、血液中の老廃物が腎臓で濾過できず、
尿として排出できなくなっていく。
治療や投薬で治ることはなく、今以上悪くならないようにするしかない。
強いて言えば「腎移植」という道か。
病状が悪化すると、血液を体外の人工腎臓で濾過し、
体内に戻してやらなければならない。
これが血液透析、俗に言う「人工透析」だ。

では、明日から急に人工透析ができるかというと、それはムリで
準備が必要となる。
血液を効率よく体外の人工腎臓に送り出して濾過し、再び体内に戻すには
腕の動脈と静脈をつなぎ合わせてバイパスを造り、大量の血流を確保する必要がある。
この手術、またはそれによってできた血管を「シャント」という。
人工透析は、この手術から始まる。

このシャントの管理も大変だ。
血流を確保するためにムリに造った血管なので、詰まるリスクがある。
シャントを造った側の左腕には、腕時計もできないし、
袖口が締まる服も着られない。
左腕を下にして寝てはいけないし、血圧測定も必ず右だ。
自分自身で毎日聴診器を当て、血管が流れている音をチェック。

かくして、母の人工透析が始まった。

週3回、1回2時間半。
毎回毎回、太い大きな針を刺される。
シャントを造って間もないせいか、その針がうまく刺さらないという。
内出血で、腕にいくつもの青黒い内出血の痕ができていく。

小さい頃から農作業の手伝いで鍛えた体力。
よくケンカし、女子プロレスに憧れたこともあったという大柄な体格。
中学を卒業後すぐに働き、
結婚後は病弱に生まれた私を必死に育てた。
私が二十歳を越えても腕相撲で勝てなかったことを思い出す。
姑(父方の母)を数年間介護した一方で、
60歳を越えても働き続けた。

そんな母が老い、弱音を吐きはじめた。
痛い、辛いと毎日のように言う。

そして不幸は続く…。